「続 山を探す」展 表裏の話 第五話「心象風景」


会期も残り3日となりましたが、今回は作品について触れてみたいと思います。

 

この作品のタイトルは「続 山を探す」ですが、純粋な風景写真ではありません。確かに風景を捉えてはいますが、あえて風景という言葉を使うなら「心象風景」と言えるでしょう。

「心象」という言葉を調べると、心の中に描きだされる姿、心に浮かぶ像、という意味があります。つまり、この作品群でいうと鹿は鹿そのものではなく、枯れ木は枯れ木そのものではない、ということが言えます。

「まるで○○のような」と言い換えたら分かりやすいかもしれません。

 

少し話がそれますが、近代写真の父と言われる写真家アルフレッド・スティーグリッツは、「Equivalent」という作品を残しました。「等価値の」という意味です。雲ばかりを捉えた作品群ですが、雲を雲として捉えるのではなく、心象や感情を雲に重ね合わせることによりそれらが等価として捉えられていたと考えられます。

スティーグリッツが雲に何かの感情を重ね合わせていたように、「続 山を探す」の作品群にどのような心象を重ねて撮影していたのか。そんなことを考えながら鑑賞されると面白いかもしれません。

 

さらに余談ですが、スティーグリッツは妻のジョージア・オキーフをモデルとした作品を多数残しています。作品群の中で印象的なのはオキーフの手。「目は口ほどに物を言う」と言いますが、手も同様のことが言えると感じている私は、オキーフの手から様々な感情を抱かずにはいられません。

私の「続 山を探す」にも手を被写体とした作品があります。手という被写体はその持ち主の生きた証が刻まれ、滲みでるものであると感じています。

 

自らの作品をスティーグリッツに重ね合わせるのはおこがましいかもしれませんが、何か等価なものを感じずにはいられないのです。

 

 

川野恭子 写真展「続 山を探す」

会 期    2022年1⽉13 ⽇(木)〜 1月27⽇(木)
会 場   CO-CO PHOTO SALON 東京都中央区銀座3丁目11-14 ルート銀座ビル 4F
時間    11:00〜18:30 日曜日定休 (最終日17:00まで)
WEB   https://coco-ps.jp/exhibition/2021/07/134/
※ 在廊日時はTwitterなどでお知らせします。